ひよこ豆による防染(宝島染工)
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特徴
- 得意なこと: 天然素材による防染(環境負荷の低さ)
- 得意なこと: 粘度調整と防染を兼ねた素材
- 得意なこと: ムラやにじみを活かした表現
- 得意なこと: 他の染料との組み合わせによる多層表現
- 課題: 再現性のコントロールが難しい
- 課題: 工程の手作業性と不安定さ
技術の背景にあるわたしたちの取り組み
- 天然素材による防染
- 食材由来のひよこ豆を用いることで、環境負荷が低く、自然に還るサステナブルな技法。
- ペーストとしての機能性
- ひよこ豆をすり潰したペーストが、防染と同時に染料の滞留や広がりをコントロールする役割を持つ。
- 偶発性を活かした表現
- 塗布や揉み込みによって、にじみやムラが生まれ、有機的で一点ごとに異なる表情をつくり出す。
- 多素材・多技法との親和性
- 藍染や草木染、墨などと組み合わせることで、重層的で複雑な表現が可能。
- 手仕事による自由なデザイン性
- 筆や手による直感的な操作ができ、図案に縛られない自由な表現を実現できる。
解説
宝島染工は、天然染料を主として、日本や世界の伝統的な「染め」の技法を抽出したり融合したりすることで、現代的で独創的な染め表現を実験・追求している染め工房だ。
模様の作り方も、折る・畳む・つまむなど「手」を使った一見シンプルな防染技法から、板締め・絞り・捺染・吹付け・糊防染など、伝統的な染め技法を多様に組み合わせている。

染色と聞くと、専門的で遠く離れたもののように感じるかもしれない。しかし、代表の大籠千春さんの仕事を見ていると、手遊びや料理のように、生活の中に当たり前にある営みとして「染め」があるように感じる。
その一つの事例がひよこ豆だ。ひよこ豆(besan / ベイスン粉)は、主にインドの染織技術でも使われている素材で、顔料の付着を助ける結合剤(バインダー)や、捺染における染料のとろみを調整する増粘剤として使われる。特にインドのブロックプリント(木版を使った手捺染)技術においては、鉄クズや糖分にひよこ豆ペーストを混ぜて発酵させ、黒色の顔料ペーストを作るのに使われる。

捺染や型染めなどの技法を模索する中で、日本で伝統的に使われてきた澱粉糊なども使ってきたが、粘度調整が難しく、かつ水も大量に必要だった。そんな中で、宝島染工のスタッフの1人が見つけて提案してきたのが、ひよこ豆だった。水を溶いただけで使える上に、素材として無くなりにくいため、持続可能性を考えた時にも最適だった。
ひよこ豆を茹でてペーストにしたものを、防染糊として布地にランダムに散らして、ムラを作り出す。そこに墨の染料を吹き付けることで、作為的でない自然な模様が浮かび上がる。その景色は、染めの工房というよりは、まるで台所で思いつくままに料理を作っているような感覚にさせられる。
また、墨・ログウッドなどの染料とひよこ豆ペーストを混ぜて、擦り付けたり吹付けたりする技法にもトライしている。

宝島染工のもう一つの強みは、こうした実験のプロセスを、属人的で作家性の高い作品では終わらせないことだ。大籠さんは、こうしてたどり着いた表現を合理的な工程に落とし込み、スタッフが誰でも再現できるように記録する。作業にかかる時間や工賃を計算し、中量生産規模で商品化しても耐えうるのかを検証する。

そこには、人間が古代から、自然や食べ物などの身近な素材を駆使してきた「染め」という営みに、より多くの人に触れてもらえるようにしたいという、宝島染工の思いがある。限られた人にしか手が届かない嗜好品としてではなく、かつては当たり前にあった知恵として開かれているのだ。
自然と対話する、防染のかたち
私たちは、ひよこ豆という自然素材を用いた防染を通じて、素材や環境と向き合う染色のあり方を探求しています。均一で制御された仕上がりだけでなく、にじみやムラといった偶発的な表情も、自然との対話から生まれる豊かな価値として捉えています。手仕事ならではの不確かさを受け入れながら、それを魅力として引き出し、現代の暮らしの中に新しい表現として届けていきます。