テキスタイルデザイナー・光井花さんとのコラボレーション(下川織物)
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特徴
- 得意なこと: 異分野の感性による新たな絣表現の創出
- 得意なこと: 「ズレ」や「ゆらぎ」を価値化するデザイン
- 得意なこと: サステナブル素材の活用と再構築
- 得意なこと: 国際的な文脈への展開力
- 課題: 技術的制約による試行錯誤の多さ
- 課題: 再現性・量産性の難しさ
技術の背景にあるわたしたちの取り組み
- 異なる感性の融合による新表現
- 伝統的な久留米絣と国際的なテキスタイルデザインが交差し、新しい美意識を生み出す。
- 「ゆらぎ」を活かすデザイン思想
- 絣特有のズレや偶発性を欠点ではなく価値として捉え、意図的に取り入れた表現。
- 廃材を活用したサステナブルな素材開発
- 余剰生地を糸として再構成し、新たなテキスタイルとして再生する循環的アプローチ。
- 錯視効果など視覚的実験の導入
- 絣の構造と視覚トリックを組み合わせ、従来にない視覚体験を生み出す。
- グローバルな発信と用途展開
- ミラノサローネなど国際舞台で発表し、アパレルやインテリアへと応用を広げている。
解説
下川織物の3代目・下川強臓さんにとって、久留米絣はコミュニケーションツールだ。経糸と緯糸が織りなす構造体は、意外なほどに変幻自在で、多くの可能性を秘めている。だからこそ、自分にはない表現や感性を持つ人たちと共に作り上げることが大切なのだという。

下川織物にとって、テキスタイルデザイナーの光井花さんとのコラボレーションは、まさに久留米絣の可能性を広げてくれたプロジェクトだ。
イッセイミヤケなど国際的なトップブランドでテキスタイルデザイナーとして活躍し、現在は自身のテキスタイル制作を行うHANA LABも立ち上げている光井さん。イギリスのRoyal College of Arts在学時から 日本の伝統的な技法である裂織りや絣織りに着目し、ファッション業界の余剰在庫や廃棄生地を細く裁断し、緯糸として織り上げることで、新たに生まれ変わらせるプロジェクトなどを出かけていた。
そんな関心もあった中で、光井さんが出会ったのが下川織物だった。2021年頃から交流が始まり、最初は余剰在庫のプリント生地を裁断して作った糸を、久留米絣のシャトル織機で織り上げる実験をしてみたが、緯糸をシャトルに巻く工程の際に糸が切れてしまうなど、なかなかうまく進まなかった。

そうした模索の中で、どんなに頑張って柄合わせをしても、意図せず柄がずれる久留米絣の特徴に着目し、あえて「ゆらぎ」を内包したデザインを生み出した。これが、下川織物とうなぎの寝床とのコラボレーションプロジェクト「ハナのユラギ」として2022年にリリースされ、経絣・緯絣・経緯絣の3種類の生地が生まれた。
その後も、光井花さんのHANA LABオリジナルのプロジェクトとして、久留米絣の括りによって生じるズレの偶発性と、視覚的な錯視効果の共通性に着目した「Optical Illusions Ikat」が生み出され、2024年にはデザイナーの登竜門ともいわれる”SaloneSatellite”に選出され、ミラノサローネでも展示された。こうした生まれた生地は、アパレルやバッグ、クッションなどといった日用品に仕立てられ、これまでと異なった絣の使われ方としても発展している。
下川織物では、こうした国内外のアーティストやデザイナー、そしてその卵たち(学生インターン)などを積極的にレジデンス生として受け入れ、交流してきた。その出身国はヨーロッパを中心にすでに10カ国以上にもなっており、中には生地制作や発注につながるケースもあるという。
すぐにお金になるわけではないことも多いが、下川さんにとっては、将来的なビジネスパートナーになりうる関係性作りでもあり、何よりも喜びを感じることでもある。彼ら一人一人が持つ「一貫したクリエイティビティの中核=魂」を探りあて、自分自身の周波数と合わせながらチューニングして、共に作り上げていく感覚なのだという。

久留米絣は、1800年頃に当時13歳だった井上伝という少女が閃き編み出した技法といわれる。彼女が織り出す絣模様は評判を呼び、40歳になるころには1000人もの弟子を抱えていた。その弟子たちはやがてほうぼうに散らばって機屋となり、久留米絣産地の礎が形成された。下川さんも伝さんのように、世界中に弟子を増やし、久留米絣を次の世代に引き継いでいくことが、夢なのだという。
異なる感性と織りなす、絣の新しい対話
私たちは、久留米絣を単なる伝統工芸として守るのではなく、人と人をつなぐコミュニケーションの媒体として捉えています。光井花さんとのコラボレーションでは、自分たちにはない視点や感性と向き合うことで、絣の可能性を広げてきました。柄のズレや素材の違いといった偶発性も含めて受け入れながら、共に新しい表現を生み出していくことに価値を見出しています。これからも国内外の多様なクリエイターと対話を重ね、久留米絣を次の時代へとつないでいきます。